【絵本レビュー4】構図が圧巻!!〈バムとケロのにちようび〉
著者 島田ゆか(1963〜)
発売日 1994年9月
出版社 文渓堂
ページ 32P
【絵】
子供っぽさ ★★★☆☆
描き込み ★★★★★
構図 ★★★★★
色使い ★★★★☆
子供っぽさ...子供が描きそうな絵、真似できる絵
描き込み...描き込んでるか、緻密な絵、リアルな絵
構図...読ませる構図、文字と絵の見せ方
色使い...配色が良いか、色の使い方や色の量
【内容】
子供向け ★★★☆☆
大人向け ★★★☆☆
文字の使い方★★★☆☆
メッセージ性★☆☆☆☆
子供向け...子供が読みやすい、楽しませるか
大人向け...大人が読みたくなる、読みごたえある
文字の使い方...文字のバランス、擬音の使い方、読ませる言葉使い
メッセージ性...教訓的、メッセージ的、意味深い
えほん作家のどっちゃんです。
今回紹介する絵本は島田ゆかさんデビュー作の「バムとケロのにちようび」です。バムケロはシリーズ累計500万部の人気絵本です!!
■作者の島田ゆかさん
東京デザイン専門学校卒業後、パッケージデザインの仕事を経て、絵本ワークショップ「あとさき塾」で学び、絵本作家になります。カナダ在住でカナダの自然の中で絵本制作のインスピレーションが沸くそうです。
■作品内容
きれい好きでしっかり者のバムと自由気ままなケロ、雨の日の日曜日に外で遊べず家で過ごします。「しかたないから きょうは うちでほんをよもう」
その前にケロちゃんが汚した部屋をお片付け。一通りきれいにしたと思ったら...
泥んこ遊びから帰ってきたケロちゃん!泥まみれのケロちゃんがまた部屋を汚します。
ケロちゃんをお風呂に入れて部屋ををきれいにします。そしてドーナッツづくりにお茶を入れて準備はOK。バムとケロはもってる本は全部読んじゃったから、屋根裏部屋に閉まってあるおじいちゃんの本を取りに行きます。
さてバムは本を無事に読むことができるのか...
■レビュー
メッセージ性が強い絵本ではなく、ほのぼのとしたバムとケロを中心とした日常を切り取ったお話です。「バムとケロのにちようび」を読むだけでバムとケロの性格が分かり、こういったキャラクターの強さを全面に押した作品はシリーズ化もされやすくファンも付きやすいです。またグッズ販売もされやすく、絵本に詳しくない方でも認知されやすいと思います。
バムケロの良さはとにかく絵のクオリティーです。
島田ゆかさんは絵の世界観づくりから、リアルさを追求した完成された絵を描きます。この場合のリアルさとは絵がリアルという意味ではなく、物の重さ感や存在感、例えばバムならこういう内装の家に住んで家具はこう置くだろうと...キャラクターが世界観を作ってるのか...世界観がキャラクターを作ってるのか分かりませんが、バムとケロの家を見るだけで完成された町並みが見えてきます。
また絵の至るところに、後に発売される絵本「かばんうりのガラゴ」のガラゴに似た雑貨や「ぶーちゃんとおにいちゃん」のぶーちゃんに似たソープボトルなど読み返すと発見する面白さもあります。
■構図に関して
構図が上手いなと思える作家なので、以前のブログでも取り上げた葛飾北斎の版画と比べて構図の解説します。
※構図は何が良いとか、どれがベストとかは一概には言えません。作者の意図が伝わるように目線誘導がされてたり、逆に目線誘導が定まらないことで構図が良かったり、どれが1番正しいとかは難しい所ですが、葛飾北斎の構図と比べると分かりやすいので今回はそれで紹介させて頂きます。
下の絵を見ると構図の共通点が3点みられます。
- 左の大きな波と小さく見える富士山の対比⇒左にバムやイスなど多く描き込み、小さなケロちゃんとの対比。
- 大きな波の波先の延長線上に富士山が見えることで大きな波→富士山の順に目線誘導される⇒バムの目線、テーブル、椅子などの延長線上にケロちゃんがいることでバム→ケロの順に目線誘導され
- 三角を意識した波の面積⇒バムの家の床の面積
一つ一つ解説していきます。
1.左の大きな波と小さく見える富士山の対比⇒左にバムやイスなど多く描き込み、小さなケロちゃんとの対比。
大きな象徴の富士山が奥に小さく見えることで、波の荒々しさや大きさ、ダイナミックさが伝わってきます。これがもし、富士山が3倍の大きさで描かれてたとしたら...もしくは富士山の周りに大量の鳥が飛んでたり、イルカがジャンプしてたら...波のダイナミックさが全く伝わりません。
同じようにバムケロの絵本では、きれい好きなバムそして整頓されたテーブルや椅子、そして汚して帰ってくるケロちゃん。バムとケロちゃんの対比によりダイナミックさが生まれます。
2.大きな波の波先の延長線上に富士山が見えることで大きな波→富士山の順に目線誘導される⇒バムの目線、テーブル、椅子などの延長線上にケロちゃんがいることでバム→ケロの順に目線誘導される。
北斎の版画は大部分が波なので左画面の大きな波が先に目に付きます。そして、大きな波先の延長線上に富士山があり、右上に波が抜けるように描かれてます。
左画面の大きな波→富士山→右上がりの波→空
の順に目線が誘導され画面全体を見せてます。構図とは目線を誘導して画面全体と見せたい対象をいかにして見せるかです。
赤いバケツを引っくり返したバムが真っ先に目に入り、すぐ上の整然と並んだテーブルやイス、その延長線上とバムの目線が 交差する所にケロちゃんがいます。
つまり
バム→テーブルやイス→ケロちゃん→床のどろんこ→壁→文字
の順に目線が誘導されます。また、色味が強い赤は真っ先に目が行くので、赤いバケツをバムに持たせてるところも構図を考えると素晴らしいです。バムが驚いて、その先に泥だらけのケロちゃんがいる。作者の意図が考えられます。
例えば、どろんこのケロちゃんが大きく描かれていて、バムが小さめに描かれてたとします。目線誘導はケロちゃん→バムが驚ろくの順になります。前ページで掃除しているバムを考えると不自然です。バム支点で話が進んでいるので、バム→ケロちゃんの順に目線誘導されるのが理にかなってます。バムと一緒に驚いて、その先に何があるの?それが作者の見せたい構図でしょう。
3.三角を意識した波の面積⇒バムの家の床の面積
北斎は丸と三角を意識した構図で知られてます。大きな波の波先とその先の富士山を線で結ぶと三角形になります。三角の面積が占める割合で構図を考られています。
大きな波の三角△の面積と右上がりの波が作る三角⊿が作る面積とバムケロの部屋の床の面積が似てます。部屋を斜めの構図にしたのも三角を意識してだと思われます。またバムとケロちゃん、文字で三角に配置されてるのも目線誘導として効果的です。
島田ゆかさんは三角を意識した構図が上手いです!!下のページを見ても三角を意識して構図を組んでることが分かります。
- 左の絵の床の延長線上に山盛りのドーナツが見え斜め上に向かってドーナツ、そして斜め下に向かってドーナツと、ドーナツで三角を作ってます。
- バムやケロちゃんの位置でも三角の構図がみられます。
- さらに左の絵の花壇の赤い花(赤い葉?)から斜め下にケロちゃんが持ってるティーカップが乗った赤いお盆、さらに延長線上にネズミの檻の床の赤→右上に上がってネズミの檻の赤と赤で三角形を作ってます。
このように幾重にも三角を意識して構図を組むことによって、目線が画面全体に誘導される構図になります。
処女作でここまで完成された絵本を出版されるのは圧巻です!!バムとケロのにちようびもし良かったら、読んでみてください。
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